雪組新人公演『春麗の淡き光に』新人公演 藤原保輔、藤原保昌の二役を演じて
(前略)
藤原保輔、藤原保昌の二役を演じるにあたり、お稽古当初は仕草や声色を変える等、テクニックだけで演じようとして、芝居の基本を忘れていました。感情から生み出される自然な二役の違いをお客様に感じ取っていただけるように、東京ではより役を掘り下げていきたいです。
また、日本物特有の台詞回しの難しさを実感しました。どこに重点をおいて話すか等、まだまだ研究の余地があると思うので、これからお稽古を重ね、追及していきたいと思います。
前回は自分のことに精一杯な私を周りの方たちがサポートしてくれました。最下級生に至るまで、お芝居が大好きという気持ちが強く、その一生懸命だがビンビンと伝わってくるので、私も負けずに頑張らなくてはと思います。
(後略)雪組新人公演プログラム(東京宝塚劇場)『春麗の淡き光に』
二回目の新人公演主演、緊張しているようですが、周りに気を配ること、これもトップスターになる素質の一つですね。この公演の評価は?
(前略)
独自の解釈を加えて本役とは多少異なる役作りを見せるのも、彼女の頼もしい部分。やはり今回も自分なりの工夫を凝らして演じているのが面白い。特筆すべきは、保輔一人が大江山の岩屋にたたずむ幕切れだ。検非違使との格闘で頬に傷を受けたことから苦境に追い込まれ、最後の場所を求めて岩屋へとたどり着く保輔。
そこで朱天童子討伐に差し向けられた親友の源頼光に新しい世を生み出す夢を託すのだが、静々しい思いに加え、哀感を醸し出したのには目を見張った。頬の傷痕を撫でつつ、世俗を捨てることとなった男の空しさ、寂しさを芝居に歌に映し出したのを高く評価したい。
恋仲だった若狭や盗賊仲間と別れる場面での情感や台詞回しの力強さも光ったが、強大な権力者に反抗して世を正そうと考える快男児のスケール感と勇壮さは今一つ薄かった。立ち回りの身のこなしに、ひ弱さがのぞいてしまったのも惜しまれた点である。
新人公演評(板東亜矢子氏):2003年(平成15年)歌劇3月号(抜粋)
この『春麗の淡き光に』の新人公演は2003年1月21日、宝塚大劇場で公演。本公演では、主人の源頼光に意見をのべる四天王である碓井貞光役に取り組み、どっしりと重みのある人物を描くように演じました。ショーの『Joyfull!!』では組子全員のラインダンスに2回出演しています。
新人公演の評価は、ちょっと厳しい評価の部分もありました。しかし、それは音月桂の著しい成長を見ての叱咤激励の意味でもあったのではないでしょうか?
演出家の大野拓史氏との対談でも、「人との絡みでも割と器用にこなしてしまい、周囲に溶け込むことが出来るんだろうけど、宝塚の主役の場合は、ドーンと個々としての存在感を出した方がいいのかな」との指摘がありました。
果たして、次の新人公演ではどんなチカラを見せてくれるのでしょうか?
トップスターへの階段は一歩ずつですが、その一段一段に責任が増してくる、そんな時期のKEIさんではなかったでしょうか。